大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1638号 判決

控訴代理人は、「第一審判決を取り消す。本件を東京地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の陳述した事実関係の要旨は、原判決の摘示するところと同一である。なお控訴代理人は、後段引用のように原判決を論難した。証拠として、被控訴代理人は、乙第一号証を提出し、控訴代理人は、これが成立を認めた。

而して当裁判所も亦原審と全く同一の見解を持し、原判決理由に詳細説示する如く、本件地方労働委員会の決定に対しては行政事件訴訟特例法第二条の定めるところに従い、訴願庁たるべき中央労働委員会に再審査の申立を為し、その終局的処分を経た後でなければ、これが取消の訴を提起することはできず、かゝる手続を経ずして為された本訴は不適法であると解する。よつて原判決の理由を凡て引用する。

控訴人は当審において、原判決を論難し、

(一)  労働組合法第二十七条第九項は、明かに労働組合又は労働者のする中央労働委員会に対する再審査の申立と訴の提起とを「又は」の字句を以て択一的に規定している。即ち地方労働委員会の処分に対し労働組合又は労働者が中央労働委員会に対し再審査の申立をすると又は直ちに裁判所に訴を提起するとは、その選択に委され、中央労働委員会に再審査の申立をすることを以て、訴提起の前提要件としていないことは規定の文言上明らかである。換言すれば、本項は、行政事件訴訟特例法第二条の例外規定を為すものに外ならない。

(二)  次に本訴において取消を求める対象たる地方労働委員会の処分は、中央労働委員会規則第三十四条第一項第四項に基く申立却下の決定である。しかるに労働組合法第二十七条第二十五条中央労働委員会規則第五十一条に規定するところは、いずれも地方労働委員会の救済申立を認容し又は棄却する命令に対する中央労働委員会への再審査申立の手続に関するものであり、右申立却下の決定に対する再審査については、同法並びに同規則共何等手続規定を設けていないのであるから、結局中央労働委員会に対しかゝる申立を為すことは許されず、直接裁判所に対し訴を提起する以外救済を得る途はない訳である。それ故本訴は中央労働委員の再審査を経ていないにかゝわらず適法であり、これを行政事件訴訟特例法第二条に違反する不適法のものとして却下した原判決は不当である。

と主張するけれども、所論は到底首肯し難い。即ち労働組合法第二十七条は第三項ないし第八項において、労働委員会の命令に対する使用者の不服申立方法即ち中央労働委員会への再審査の申立及び訴の提起について詳細に規定し、殊に第四項は、行政事件訴訟特例法第二条に掲げる訴願前置主義の例外として、使用者が地方労働委員会の命令につき、再審査の申立をすることなく一定の期間内に右命令取消の訴を提起することができるとしているのに対し、労働組合又は労働者側よりする不服申立については全然この種の規定を欠いているところから見ても、右組合法第二十七条第九項は単に労働組合又は労働者は、地方労働委員会が不当労働行為に対する救済申立を拒否したときは、その処分に対し中央労働委員会に再審査の申立をすることもできるし、又当初から労働委員会を通ずる救済方法を選ぶ代りに別に訴訟手段によつて保護を求めることも同条により妨げられるものでないとの趣旨を注意的に規定したに止ることは多く疑を容れず、控訴人所論の如く同条項の「又は」の字句を捉えて地方労働委員会の申立棄却又は却下の処分に対し、中央労働委員会の再審査手続を経ずに訴を提起しうることを定めた趣旨とは解し得られないのである。又労働組合法第二十七条第一項において、地方労働委員会が不当労働行為の申立を受けたときは、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは申立が理由ありや否やにつき審問を行うべきことを定めているのは、審問の必要なしと認められる場合にこれを行わずして申立を却下するのを当然のこととしているのであつて、その故にこそ中央労働委員会が労働組合法第二十三条の授権に基き制定した中央労働委員会規則第三十四条に申立却下に関する手続を規定しているのである。従つて労働組合法第二十五条第二項の再審査の対象となるべき地方労働委員会の処分のうちには、申立却下の決定をも含むことは勿論である。その再審査の手続は中央労働委員会規則第五十一条の定めるところに従うのである。このことはもと同条第三項に「命令書交付の日から」とあるのを昭和二十六年五月十二日中労委規則第一号を以て「命令書又は決定書が交付された日から」と注意的に改正したのに徴しても明らかであるが、その趣旨に至つては右改正の前後を通じて何等変りあるべき筈はない。これを要するに、本訴を不適法として却下した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三百八十四条第八十九条第九十五条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 大江保直 梅原松次郎 奥野利一)

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